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池之上 翼; 嶋寺 光*; 中西 貴宏; 近藤 明*
Water (Internet), 15(15), p.2734_1 - 2734_18, 2023/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Environmental Sciences)福島第一原子力発電所事故は沿岸海域における堆積物へのCsの蓄積を引き起こした。また、河川から海洋へのCsの供給は沿岸海域における堆積物中のCsの長期的な挙動に影響を与える可能性がある。福島沿岸の河川流域には大規模な除染地域や避難指示地域が含まれているため、除染作業や農業再開を考慮することはCsの供給量を予測する上で重要である。そこで本研究は、これらの人間活動の影響を考慮した分布型放射性セシウム予測モデルを用いて、福島沿岸河川から海洋へのCs供給量の30年間の予測を実施した。結果として、除染地域と避難指示地域のある河川流域では人間活動により、農地、市街地、森林から河川へのCsの流出量は5.0%、海洋へのCs供給量は6.0%それぞれ減少すると推定された。これらの結果は、人間活動がCsの流出と供給に与える影響は小さかったことを示している。事故の影響を受けた河川から海底堆積物へのCs供給量は、事故初期の沿岸海域における堆積物中のCsの存在量に対して11%から36%に相当すると推定された。したがって、沿岸海域における堆積物中のCsの長期的な挙動には河川から海洋へのCs供給が重要なプロセスであることが示唆された。
池之上 翼; 嶋寺 光*; 中西 貴宏; 近藤 明*
Science of the Total Environment, 876, p.162846_1 - 162846_12, 2023/06
被引用回数:2 パーセンタイル:52.26(Environmental Sciences)土地利用のCsの挙動特性を考慮し、阿武隈川流域におけるCsの30年間の環境動態シミュレーションを実施した。30年間で海洋へ輸送されたCsは阿武隈川流域の初期沈着量の4.6%に相当し、阿武隈川流域に沈着したCsの実効半減期はCsの半減期より3.7年(11.6%)短くなると推定された。これらの結果は事故によって沈着したCsが数十年残留し続ける可能性があることを示唆するものであった。土地利用におけるCsの挙動を分析した結果、2011年における市街地による海洋へのCsの輸送の寄与は、総輸送量の70%に相当すると推定された。一方で、2012年から2040年における農地による輸送の寄与は総輸送量の75%に相当すると推定された。事故後30年間、人間活動のある地域とない地域に残留するCsの放射性崩壊を除いた削減率は、それぞれ11.5%から17.7%、0.4%から1.4 %と推定された。これらの結果は、過去から将来にかけて人間活動が土地に残留するCsの減少を促進することを示唆するものであった。
池之上 翼; 川村 英之; 上平 雄基
Journal of Nuclear Science and Technology, 60(1), p.61 - 71, 2023/01
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)福島第一原子力発電所から仮想的に放出された溶存放射性核種の海洋拡散について、長期海洋再解析データを用いて数値シミュレーションを実施した。シミュレーション結果に基づいて統計的に解析を行い、海洋における溶存放射性核種の挙動の特徴と傾向を評価した。福島沿岸海域の放出地点における表層流の南北成分と黒潮続流は、それぞれ福島沿岸海域の表層における放射性核種の南北方向の輸送と沖合の表層における放射性核種の東方向の輸送に大きく影響した。沿岸から沖合にかけての表層における運動エネルギーが大きいと表層における放射性核種の拡散範囲が大きくなる傾向があった。夏季(7-9月)には、福島沿岸海域での表層における放射性核種の南向き輸送によって黒潮続流に取り込まれる放射性核種の頻度の増加と表層における運動エネルギーが大きいことにより、表層における放射性核種の拡散範囲が大きくなった。冬季(1-3月)には、福島沿岸海域での表層における放射性核種の北向き輸送によって黒潮続流に取り込まれる放射性核種の頻度の減少と表面運動エネルギーが小さいことにより、表層における放射性核種の拡散範囲が小さくなった。
田中 草太; 柿沼 穂垂*; 足達 太郎*; 高橋 知之*; 高橋 千太郎*
KEK Proceedings 2019-2, p.179 - 182, 2019/11
福島第一原子力発電所事故後の節足動物における放射性セシウム濃度の経年変化は、食性によって大きく異なり、昆虫類などを捕食する肉食性のジョロウグモでは、植食性のコバネイナゴや雑食性のエンマコオロギと比較して、放射性セシウム濃度が維持される傾向にある。餌資源を生きた植物、すなわち、生食連鎖に依存する種は、事故後の時間経過とともに放射性セシウムが減少するのに対して、汚染が蓄積するリターや土壌表層の有機物に起因する腐食連鎖に依存する種は、放射性セシウム濃度が維持されるものと考えられる。造網性のクモ類は、森林土壌の表層から発生する飛翔性昆虫に主な餌資源を依存しているために、放射性セシウム濃度が維持するものと予想される。しかしながら、土壌表層から地上部に生息する捕食者への放射性セシウムの移行をどのような餌昆虫が担っているかは不明である。そこで本研究では、造網性クモ類の餌となる飛翔性昆虫について、放射性セシウム濃度を調査した。その結果、事故8年後においても、飛翔性昆虫の多くから、Csが検出された。特に、造網性のクモ類の餌となる腐食性のハエ類が、放射性セシウムの移行経路の1つとして重要である可能性が示唆された。
Periez, R.*; Bezhenar, R.*; Brovchenko, I.*; Jung, K. T.*; 上平 雄基; Kim, K. O.*; 小林 卓也; Liptak, L.*; Maderich, V.*; Min, B. I.*; et al.
Journal of Environmental Radioactivity, 198, p.50 - 63, 2019/03
被引用回数:21 パーセンタイル:67.06(Environmental Sciences)北西太平洋海域における福島第一原子力発電所事故起源のCs放出に対して、複数の海洋拡散モデルを適用し、モデル対モデル及びモデル対観測の比較を実施した。シミュレーション期間は2年間とし、施設から海洋への直接放出と大気から海洋表層への沈着過程を考慮した。海洋拡散モデルには生物モデルが導入されている。シミュレーション結果は海水中,堆積物中,海産生物中のCs濃度で比較した。その結果、モデル対モデル及びモデル対観測の比較において、妥当な結果が得られた。
片桐 裕実; 篠原 邦彦; 渡辺 均; 仲田 勲; 磯崎 久明; 磯崎 徳重; 中野 政尚; 森澤 正人*
JNC TN8440 2000-003, 93 Pages, 2000/08
再処理施設から海洋へ放出される低レベル液体廃棄物による東海地先海域における放射能レベルの変動を詳細に把握するため、放出口を中心とした一定海域において海水中の全放射能濃度、3H放射能濃度及び137Cs放射能濃度調査を実施した。サイクル機構再処理排水環境影響詳細調査は、海中放射能監視確認調査(再処理ホット試験期間実施)の後を受け、また、再処理施設の本格運転に伴う茨城県の要請に基づき、1978年(昭和53年)7月から実施している。その結果、再処理施設排水に起因すると思われる放射能濃度の上昇は観測されなかった。また、1978年以降22年間にわたる環境影響詳細調査について検討した結果、再処理施設排水による海域全体の放射能レベルの変動は見られなかった。
宮部 賢次郎; 高崎 浩司; 安中 秀雄*; 泉 雄一*
JNC TN8420 2000-007, 100 Pages, 2000/08
本調査報告書は、核燃料サイクル開発機構が(株)日本環境調査研究所に委託した平成11年度の「市販洗浄剤の放射性汚染に対する除染効果比較試験(その3)」の成果をまとめたものである。管理区域内における放射線作業では、トラブルにより身体・皮膚の放射性汚染を生じる場合がある。放射性物質による身体汚染(皮膚汚染)をできるだけ速やかに除去できるように放射線管理上の措置を講じる必要がある。現在配備してある除染剤の酸化チタンペーストは、実際の使用実績を有する信頼性の高い身体除染剤であるが、使用できる状態の保存期間が数ヶ月と短いために、交換・補給整備に難点がある。このことから、平成10年度のCs-137及びRu-106での試験に引き続き、22種類の各種市販洗浄剤について、今回はCo-60の身体・皮膚除染剤に関する調査・試験を実施した。除染試験は、豚皮の試料にCo-60の放射性溶液を滴下し、5分及び40分放置した後、各種洗浄剤にて洗浄し、洗浄前後の試料の放射能比を求めた。試験の結果、Co-60の除染効果については、Cs-137及びCe-144の除染効果とほぼ同様の傾向が見られた。また、これまでの試験結果より、酸化チタンペーストの除去率と同等以上の除去率を示す洗浄剤が11種選ばれ、その中で製造中止や入手困難なものを除いた7種の洗浄剤が最終的に選定された。
和田 浩明
JNC TN8400 2000-015, 37 Pages, 2000/03
本報告は、博士研究員として平成9年10月から平成12年3月までに行なった研究内容をまとめたものである。本報告は、大きく2つの内容に分かれている。すなわち、1つは、高エネルギー光による電磁遷移過程の遷移率の厳密解を求める研究である。2つめの研究は、 Cs(n,) Cs熱中性子吸収反応で Csのアイソマー(Cs)が生成される確率の測定である。(1)最近の高エネルギービーム技術の発展により、高エネルギー光の研究に対する関心が高まっている。本研究では、高エネルギー光に対する電気的遷移(El遷移)厳密なものを使い、原子核の波動関数として調和振動子型波動関数を使った。(2)放射性核種 Csの熱中性子吸収断面積を高精度化するため、Cs(n,) Cs反応でCsが生成される確率を測定し、Cs生成の寄与を含む断面積を求めた。CsとCsの両方の崩壊から放射される1436KeV線の時間変化から、CsとCsが熱中性子吸収反応で生成される割合を求めた。その結果、Csが生成される確率は0.750.18となった。この場合、Cs生成が熱中性子吸収断面積に与える寄与はこれまでの実験値を92%上方修正させ、熱中性子吸収断面積として0=0.270.03bが得られた。
工藤 章*; 藤川 陽子*
JNC TJ8400 2000-010, 67 Pages, 2000/02
本書では、前半部分において「長崎原爆プルトニウムの放出と環境中の移動性」について、後半部分において「わが国のファーフィールドにおける放射性核種移行研究の到達点」についての研究成果を報告する。長崎県長崎市西山地区で450cmの深さまでの不飽和帯土のコアを採取し、90Sr、137Cs、239+240Puの鉛直分布を決定した。その結果、大部分の放射性核種は、地表から30cmの層に見出された。しかしながら、90Srと239+240Puは、200cm以深の地下水からも発見された。137Csは、地表面から40cm位深、あるいは地下水中には見出せなかった。これらのことから、全239+240Puの3%は、土壌表層に留まる残り97%のプルトニウムよりも速く、土壌中を移行していることを示している。また、1945年の長崎フォールアウトを示す137Csと239+240Puのシャープなピークが、西山貯水池の堆積物コアから見つかった。一方、90Srはその堆積物中を移動するため、1945年に堆積した層にはピークを見出すことが出来なかった。さらに、239+240Puは1945年よりも古い年代の層でも見つかった。一方、年輪中の239+240Puは、堆積物コアとほぼ同様の分布をしていたが、極めて微量の239+240Pu(1%程度)は1945年の年輪よりも内側から発見された。これら事象より環境中の移動性239+240Puの存在を推定した。報告書の後半部分においては、「地層処分研究開発第2次とりまとめ」および現状の放射能移行評価研究について、特に天然バリア(例えば、ファーフィールド)および地表生態圏を対象とした放射能移行モデルを中心にレビューを行い、今後の地層処分の環境安全評価に関連して進めるべき環境関連研究の方向について検討した。その中では、Genericな安全評価研究からサイト特異的な安全評価研究への移行を中心に、説明的モデル、スクリーニングモデル、予測モデルといった目的別モデルの適用手順、モデル予測と安全評価にまつわる不確実性への対処手順、そして安全評価の予測に対する信頼性向上の手順としてわが国の野外条件下で取得された物質移行データによるモデル検証の必要性について議論を行った。
not registered
PNC TJ1533 97-001, 461 Pages, 1997/03
地層中における核種の移行挙動を把握するため、TRU核種を中心とした放射性核種の地層中での移行特性、種々の溶液条件下における各核種の存在化学形の把握等を初めとする溶液化学について、基礎的な研究を行った。(1)地層中における核種移行に関する研究地層中の核種の移行挙動を把握するため、黒雲母へのウランの吸着係数のpH依存性、炭酸濃度依存性の測定を行うとともに緩衝材中のガスの移行挙動を明らかにするため、圧密モンモリロナイト中におけるヘリウムガスの拡散係数の測定を行った。また、長寿命核種として注目されているテクネチウムの挙動を解明するため、93Nb(、2n)95mTc反応と昇華法を用いたテクネチウム95mの調整を行い、スズ存在下でのテクネチウムとフミン酸の反応に関する実験を行った。(2)TRU核種の溶液化学に関する研究処分後の地質環境中におけるTRU核種の挙動を把握するため、電気二重層を用いたセシウムおよびネプツニウムの吸着挙動の解析、ネプツニウムとフミン酸物質の相互作用の解析を行った。また、極低濃度のトレーサー実験に最も適した崩壊特性を持つキュリウムとプルトニウムの製造に関する研究を行った。さらに、ニアフィールドにおける固液界面での物質移行解明のために、半経験的分子軌道法を用いたシミュレーション計算を行った。
樋口 英雄*
PNC TJ1309 96-001, 113 Pages, 1996/03
本報告は、本邦での核燃料サイクル施設の本格的稼働を間近に控えたこの時期において、核燃料サイクルとも関連した環境中の長半減期放射性核種の分析法並びにそれらのレベルを調査した結果をとりまとめたものである。本報告書は以下の項目の内容が記載されている。(1)トリチウム人体代謝モデルの検証に環境データを用いる際の問題点(2)二酸化炭素吸収剤を用いる環境中の14C測定法(3)99Tc分析のための95mTcトレーサーの製造(4)放射性降下物の最近の状況(5)環境試料中の241Pu分析(6)環境試料中の242、243、244Cm分析(7)線放射体測定のための収率トレーサー(8)クロスチェックについて
田中 忠夫; 大貫 敏彦
Journal of Nuclear Science and Technology, 33(1), p.62 - 68, 1996/01
被引用回数:8 パーセンタイル:58.77(Nuclear Science & Technology)微細土壌粒子に収着したCo、Sr及びCsの移行特性を調べるため、粒径5m以下の微細土壌粒子を含有する放射性核種水溶液を長さが1~10cmで異なる粗砂カラムへ流入した。放射性核種の流出量とカラム長さとの関係から、微細土壌粒子から粗砂カラムへの放射性核種の1次脱離速度定数(K)を求めた。微細土壌粒子及び粗砂に対する放射性核種の分配係数をバッチ法で測定した。Co、Sr及びCsの流出率は、カラムが長くなるに従って最初は減少したが、その後一定値0.3、0.1、0.8にそれぞれ至った。微細土壌粒子に対する各核種の分配係数は、粗砂に比べて数10倍大きかった。各核種のKの大きさはSrCsCoの順であった。これらの結果は、微細土壌粒子への粗砂に比べて大きな放射性核種親和性が、放射性核種のコロイド的な移行を生じさせたことを示す。
田中 忠夫
JAERI-Research 95-044, 21 Pages, 1995/06
降雨と蒸発が繰り返し行われる自然界の通気層土壌中における放射性核種の吸着・脱離挙動を明らかにするため、海岸砂に吸着させたCo、Sr及びCsを乾燥と湿潤が繰り返し生じる条件下で脱離させるバッチ法脱離実験を実施した。全ての放射性核種の脱離率は乾燥期間の影響は受けなかった。乾湿脱離条件下でのSr及びCsの脱離率は連続脱離条件下での値に比較して増加したが、Coの脱離率は連続脱離条件下での値との有意な差がみられなかった。また、乾湿脱離条件下では砂表面の崩壊が生じ、それに伴い砂からイオン及び土壌微細粒子が液相中へ溶離された。乾湿脱離条件下におけるSr及びCsの脱離率の増加は、水に接している間に生じる砂表面の変質及びCsを固定した土壌微細粒子の発生に起因させられた。
飛田 和則; 住谷 秀一; 森田 重光
PNC TN8450 94-006, 28 Pages, 1994/12
本報告書は、平成6年5月19日及び5月20日の両日にわたり、福井県敦賀市プラザ萬象で開催された日本保健物理学会第29回研究発表会において、動燃東海事業所から報告した発表のうち、安全管理部環境安全課から発表報告した「放射性物質の移行に関するダイナミックモデルの開発」及び「長半減期放射性核種の土壌環境中における挙動について」の2件をとりまとめたものである。今後とも、両件について検討を継続する予定であり、また関連する環境安全研究を進めていくなかで、参考にされたい。
田中 忠夫; 山本 忠利
JAERI-Research 94-010, 30 Pages, 1994/08
天然バリア中における放射性核種の正確な移行評価手法の確立に資するため、Co、Sr及びCsの砂質土壌中における移行挙動に及ぼす自然環境下の通気層中で生じる降雨と蒸発の繰り返し(乾湿サイクル)による水の不連続な流れの影響を実証的に調べる環境シミュレーション試験を実施した。乾湿サイクル条件下においては、流れの停止期間中にSrの土壌への吸着能を減少させる間隙水中のCa濃度の増加が生じるため、陽イオン性Srの移行性が増大した。陽イオン性Co及びCsの移行性には乾湿サイクルの影響はみられなかったが、流れの停止期間に土壌層中を移行しやすい{Co(OH)}nや、土壌中微細粒子に固定されたCs化学種の生成が進むため、粒子性Co及びCsの土壌層深部への移行量が増大した。
田中 忠夫; 大貫 敏彦
Geochemical Journal, 28(5), p.369 - 376, 1994/00
被引用回数:5 パーセンタイル:15.98(Geochemistry & Geophysics)バッチ実験で測定したCsの分配係数に及ぼす土壌量と水溶液量との比(固/液比)の影響を海岸砂質土壌、カオリン及び石英砂の3種類の土壌について調べた。3種類の土壌についてのCsの分配係数は、固/液比が増大するに従って減少した。このとき、土壌から水溶液に溶出した陽イオンの濃度は、固/液比にともなって変化した。しかしながら、共存する陽イオンの濃度を10mol/lと一定に保った場合、Csの分配係数は固/液比の影響を受けなかった。これらの結果は、固/液比はCsの分配係数に直接的な影響を及ぼさないが、固/液比に基づく土壌からの溶出陽イオン濃度の変化が分配係数の変化を生じさせたことを示した。
田中 忠夫; N.Shiwei*
JAERI-M 93-185, 17 Pages, 1993/10
海岸砂質土壌中におけるCo,Sr及びCsの移行性に及ぼすフミン酸錯体形成の影響を明らかにするための吸着・移行実験を行った。Co及びSrは溶存フミン酸との錯体を形成した。Coの錯形成能はフミン酸の分子量に依存しなかったが、Srはフミン酸の分子量に依存した。フミン酸共存条件下において、砂質土壌に対するCoの収着比は減少し、移行性は増大した。液相中Co化学種の分子量の分布は、収着平衡並びに錯化平衡の成立により、収着実験の前後において同じ傾向を示した。Srの移行性は、フミン酸共存によって収着比が影響を受けなかったのにも係わらず、フミン酸共存条件下で増大した。そのような矛盾は、吸着実験と移行実験との間での反応速度の違いから生じたものと推測された。Csの吸着性と移行性はフミン酸の共存によって影響を受けなかった。
江本 武彦; 鳥居 建男; 安藤 秀樹
PNC TN9410 93-186, 65 Pages, 1993/09
放射線防護および放射線遮へい評価の観点から、原子力施設内作業環境におけるストリーミングの検出や加速器からのビーム損失の測定評価など、放射線の位置情報把握の必要性が高まっている。一方、高エネルギー物理学の分野では、プラスチックシンチレーションファイバー(PSF)が一般的な検出器となりつつある。そこで、PSFを用いた放射線位置検出器を開発することとし、今回は位置検出器としての定量的な基礎特性の測定を目的として、PSFの特性の調査と試験を行った。調査方法は、昨年度実施した委託研究の成果とともに文献調査を中心におこなった。また、試験は線に対する効率の向上とPSFの長尺化を狙い、PSFの効率,分解能の、1.長さ,バンドル数といった形態の違いによる影響や、2.照射位置の違いによる影響に特に重点を置いた。調査および試験の結果、以下の様なことがわかった。(1) PSFのシンチレーション光の到達時間差を用いる方法は、比較的簡便で精度の高い放射線の入射位置の測定法として有望である。(2) 分解能はコリメートされた137Csの線を用いて半値幅で20cm30cmであった。また、PSF10本にバンドルすることは効率や分解能の向上に有効である。(3) PSFの端に近い照射では効率,分解能ともに10%30%ほど悪くなる。
C.K.Park*; S.I.Woo*; 田中 忠夫; 神山 秀雄
Journal of Nuclear Science and Technology, 29(12), p.1184 - 1193, 1992/12
多孔質凝灰岩への収着特性を研究するために、Co,SrおよびCsの収着実験が行われた。収着速度と律速過程が調べられた。また、収着と分配比に及ぼす粒径の影響も調べられた。種々の抽出剤を用いての脱着実験が行われ、地下水条件における可逆収着およびイオン交換、Fe-Mn酸化物やオキシ水酸化物との結合、不可逆的固定化などの収着機構の識別が行われた。ストロンチウムは、凝灰岩表面に反応速度が速く可逆的であるイオン交換反応によって主として収着される。コバルトとセシウムの収着過程は単純ではない。コバルトの収着は、主としてFe-Mn酸化物への結合であり、不可逆的な固定化も起こる。コバルトの収着速度は、鉱物の格子への拡散によって支配される。セシウムの主な収着は不可逆的固定化であり、イオン交換も生じている。
加瀬 健; 小無 健司
PNC TN8420 92-022, 33 Pages, 1992/11
放射性廃棄物の消滅処理は原子炉によるFPの消滅処理が1964年にBNLのSteinbergによってはじめて提案され、1970年代にはいろいろな消滅処理方法が研究されていた。一時、研究は中断されていたが、1980年代後半になって、再び消滅処理研究が注目を集め、現在盛んに研究が行われている。本報告書は、その各消滅処理研究の概要及び、最近の消滅処理研究の現状と動向をまとめたものである。